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「常盤団地の魔人」あらすじと感想まとめ。芥川賞作家の最新作

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この記事では常盤団地の魔人のあらすじと感想をまとめています。


佐藤厚志著「常盤団地の魔人」

芥川賞作家でもある佐藤厚志さんの最新作がこの度発売となりました。

団地に潜む魔人?なんだか少し不気味な作品名ですがどういったあらすじなんでしょうね?

さっそく簡単なあらすじと読んだ感想をまとめていきますのでご興味のある方はぜひチェックしてみてください。

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常盤団地の魔人の概要

2024年7月新潮社より刊行。

前作「荒地の家族」は第168回芥川賞を受賞しており、佐藤厚志さんにとってはこちらを受賞してからの初作品となります。

また本作は宮城県の県紙である河北新報にて連載した小説「常盤団地第三号棟」を元に書籍化されました。

宮城県の「常盤団地(ときわだんち)」に住む小学3年生の少年・今野蓮を主人公に据え、そこで暮らす人々の生活を蓮の視点から描く物語です。

常盤団地の魔人あらすじ

今野蓮は小児喘息を患っており、これまで特別支援学級で過ごしていたが小学3年生への進学を機に通常クラスへ編入され初めてクラス替えを経験することになった。

不安とは裏腹にやがて友達もでき、彼の家がある団地周辺に住む悪ガキ集団へと入っていく。

いつも遊びの邪魔をする管理人、雑木林にあるひょうたん池の謎、可哀想な捨て犬、厳しい親の教育。

身体的にも精神的にも強くない蓮が、様々なことを乗り越えながら大人へと成長していく物語。

常盤団地の魔人の感想

ここからは常盤団地の魔人を読んだ感想をまとめていきます。決して幸せな家庭とは言えない蓮の生活模様はかなりリアリティを帯びていて、物語の世界に引き込まれます。

まるでノンフィクションのようなリアリティさ

団地に住む蓮の成長を描く本作。小学3年生とまだまだ子供ながら色んなことに挑戦し、悩み、決断する姿はとてもリアリティが溢れています。特別支援学級からのクラス替えで蓮は不安を見せていましたが、そういえばクラス替えの時ってこんな感情になったなぁと自分の学生時代を振り返りながら読める鮮明さがあります。

話の中では「ワコウイッセイ」という小学6年の上級生が登場しますが、蓮は彼に恐怖と憧れを覚えます。小学生の頃って上級生がめちゃめちゃ大人に見えますよね。たった2〜3歳しか違わないのに自分よりずっと大きく見える。大人になればその差は大したことないですが、小学生にとってはかなり大きい。近付くのは怖いけど自分もああなりたい、気に入られたい。

そういった蓮の感情を間接的に読者に訴えかける佐藤厚志さんの文章力は、さすが芥川賞作家だなと感じます。団地やクラスの雰囲気、遊び場の情景、文字しか読んでいないのに頭の中にしっかりと光景が浮かび上がる。

厳しすぎる親の教育や当たりの強い友人など、決して綺麗な物語ではない故にリアルさがより引き立てられていました。

まだ広い世界を知らない小学3年生から感じること

小学3年生ということもあり、蓮にとっては今住んでいる団地周辺が自分の世界のすべてです。外の世界を知るきっかけも未だない中、いろいろなことを経験してこれから徐々に大人の階段を登っていくのでしょう。

学校や住んでいる団地では辛いこともたくさん起こります。

親や兄は自分に対してとても冷たく接し、時に暴力を振るうことも。悪ガキ集団の中では上級生が立ち塞がっているのでいつも下っ端のような扱われよう。このままでは蓮は辛い思いしかせず、これからの長い人生にも絶望を感じてしまうかもしれません。

置かれている環境を俯瞰し、どうか自分はまだ狭い世界にしか居ないということを早くどこかで気づいて欲しいです。この世には辛いことばかりではない。私たちの人生も辛い部分にどうしても目がいきがちですが、よく考えてみると楽しいことや素晴らしいことがたくさんあるはずです。

改めて自分の人生観を見つめ直すきっかけを小学3年生の蓮が与えてくれます。辛いことばかり考えず幸せを感じる心をもっと養っていけるよう、これからの人生も生きていきたいですね。

常盤団地の魔人あらすじと感想まとめ

今回は常盤団地の魔人のあらすじと感想をまとめてみました。

著者の地元、宮城県を舞台に展開される物語。読書好きはもちろんですが、やはり宮城県にゆかりのある方は特に楽しめる作品に仕上がっておりました。

佐藤厚志さんの今後の作品も引き続き追って行きたいと思います。

本記事が少しでも多くの方の参考となりましたら幸いです。

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