本記事では推し、燃ゆのあらすじを簡単にご紹介しています。加えて結末含むネタバレ感想も記載しておりますのでまだ読まれていない方はご注意ください!
今回は宇佐見りん著「推し、燃ゆ」をご紹介いたします。
好きなアイドルやアニメのキャラクター、俗に言う「推し」を通して物語が展開していく作品です。
推しが全ての世界で、彼女は今日も生きていく。
作品タイトルからして目を引く本作、読書通をも唸らせる芥川賞受賞作ということでさっそく読了。
あらすじと感想を綴ります。
推し、燃ゆのあらすじと概要まとめ(ネタバレなし)
まずは推し、燃ゆの概要とあらすじをみていきましょう。
推し、燃ゆの概要
2020年9月に河出書房新社より刊行、著者は宇佐見りん。
第164回芥川賞受賞作品、さらに2021年本屋大賞にもノミネートされ注目を集める。
15か国の地域で翻訳がされており全世界で80万部を超えるベストセラーとなっています、日本だけでなく世界でも読まれている作品なんですね…!
多くの若者が一人はいるであろう「推し」を題材とし、普段本を読まないTikTok世代(つまり若い方々)でも共感したり楽しんだりすることができる現代を象徴するような作品。
推し、燃ゆのあらすじ
次に推し、燃ゆのあらすじを簡単にまとめていきます。
物語のオチとなるネタバレはまだ記載しておりませんが、少しでも真っ白な状態で読みたい方はここからもう読まないようにしてください!
物語の主人公である「あかり」は女子高生。
アイドルグループ「まざま座」のメンバーである上野真幸を「推す」ことを生きがいとしており、楽しくもない学校やアルバイトで苦悩する日々をなんとか生き延びている。
ある寝苦しい夏の夜、その推しが燃えた。
SNSを開くと、どうやら推しがファンの子を殴ったらしいということが分かる。
翌日、通学電車に駆け込んできた成美は開口一番に「無事?」と聞く。
あかりは「駄目そう」と答える。
見学者として参加したプールの授業を終え、昼休憩の教室で事務所から出てきた推しの映像を見る。
多くのカメラフラッシュを浴びる推しはいつもより疲弊したように見えた。
一生涯かけて推すつもりだった人物の炎上を前に、あかりは何を思うのか。
推し、燃ゆの結末含むネタバレ感想
ここからは推し、燃ゆの結末含むネタバレが含まれます!
まだ読まれていない方は十分にご注意を!!!
背骨のような存在
推しを推し過ぎたがために苦悩する主人公の思いがひしひしと伝わってくる本作、狂気じみた雰囲気をも感じさせる推しへの想いに少し心苦しくもなる。
「中心っていうか、背骨かな。」
文中にある主人公・あかりのこの発言、自分の生活は全て推し中心だという信念を感じました。
でもその推しがファンを殴って炎上、さらには個人のインスタライブでグループ解散を突然告げ、正式な記者会見の場では左手の薬指に指輪をしており結婚を匂わせ、まさに火に油を注ぐように推しは燃えていきます。
あかりが推しを初めて見たのは4歳のころ、その時ピーターパンを演じていた推しは12歳。
高校生になるまで推し続けているあかりにとって推しはもはや背骨、なくなれば立つことすらできないというこの表現はすごく上手だなぁと素人ながらに感心を覚えます。
嫌なことや辛いことがあっても私には推しがいる、心の支えといえば良いように聞こえるがまるで一種の洗脳された宗教活動のよう。
「推しのいない人生は余生だった。」
心の支えってすごく大事、でも一つのことに支えられすぎるのも良くないんですねぇ。
推し、燃ゆはつまらない?
ネット上での本作の評価にて「つまらない」という文言がしばしば見られました。
読んでいて激しく盛り上がる部分はないので確かにつまらないと感じる方もいるかとは思いますが、個人的には面白かったですしさすがは芥川賞受賞しただけあるなぁと感じます。
特に推しを背骨とする発言や、推しのいない人生は余生など、端的だけどインパクトのある表現がとても上手く口に出したくなります。
また、表現だけでなく物語の動きもリアリティがすごい。
物語の終盤では、インスタライブで一瞬映り込んだ窓の外の景色から推しが住んでいるマンションを特定されます、ここらへんもリアリティがありますよね。
そして実際にあかりはそのマンションへ行ってしまうわけですが、特に何をするわけでもなくマンションを眺めているとある部屋のベランダの窓が空き、ショートボブの女性が洗濯物を抱えて出てきます。
目が合いそうになって逃げるようにその場を去るあかりですが、もちろんその女性が推しの結婚相手だとは限りません。
だけどこの状況だとあかりにとっては結婚相手にしか見えないわけで、読んでいるこちらまでこのなんとも言えない感情を共感してしまう。
そして家に帰ったあかりは散らかったいつもの部屋を見て現実に引き戻されます。
なぜ自分は他の人のように生活できないのか、様々な感情をぶつけるためにテーブルにあった綿棒のプラスチックケースを思い切り叩きつけ…。
だけどこれが自分の生きる姿勢だということを改めて悟り、綿棒をひろうところで物語は終わります。
自分の恋人を推しとするのならそれでいいのかもしれないけれど、大半の推しは画面越に眺める存在。
こんなにも好きなのに相手は自分のことを何も知らない、ある意味で空想のような推しへの想いは適度に調節するべきなのかもしれません。
毎日のようにどこかで発生する推しという存在、これを題材として物語を書いた宇佐見りんさんのセンスも改めて光る作品となっていました、別作品も読んでみよう。
推し、燃ゆのあらすじとネタバレ感想まとめ
今回は推し、燃ゆのあらすじと結末を含むネタバレ感想をまとめてみました。
多くの著名人が炎上する現代社会、突拍子もない発言や不倫、暴力など理由は様々。
いま自分の推しが大炎上したら、明日あなたは何を思って過ごしますか?
推しがいる皆様は本作のリアリティがある世界観にどっぷりつかってみてはいかがでしょう。
本記事が少しでも多くの方の参考になりましたら幸いです。