今回は伊坂幸太郎著「終末のフール」をご紹介します。
伊坂さんにゆかりのある仙台を舞台にした作品。
本作は月刊小説誌「小説すばる」にて2004年2月号〜2005年11月号に掲載されている8つの短編をまとめた短編集となっています。
現実とはかけ離れた、いやもしかすると現実でも起こり得るかもしれない状況の中、人々はいかに時を過ごすのか。
読み手側に「あなたならどうしますか?」と訴えかけてくるような、そんな作品でした…!
2006年に発売後、今もなお多くの人に読まれている人気作です。
伊坂ワールドを堪能したい方、読書をこれから始めたい方にオススメ!
以下、あらすじと感想になりますので参考までにどうぞ。
あらすじ
8年後、地球に小惑星が衝突する。
突然SF映画のようなニュースが、世界中を駆け巡った。
街中を逃げ惑う人々、強奪、殺人が世に溢れかえり、小惑星が衝突する前に世界は終末を迎えるのではないか。
そんなパニック状態に陥ってから5年の歳月が過ぎ、衝突まであと3年になった頃のお話。
舞台は仙台の北部に位置する団地「ヒルズタウン」。
どこにでもあるようなごく普通の団地である。
小惑星衝突のニュースが出た頃は大変な状況であったが、今では平穏を取り戻し最後を迎えるその時に向けて生活を続ける人々がいた。
大喧嘩をした家族と仲直りをする者、愛する人に宿った新しい命の今後に悩む者、当時と変わらず体を鍛える者、小惑星衝突時の大津波に備えて櫓を築く者。
誰がどう言おうと、どう足掻こうと、全人類みな平等、余命残り3年。
突如として突きつけられた「終末」。
残された人々は何を思い、どんな時を過ごすのか。
あなたなら…残りの時間を誰と、どのように過ごしますか?
感想(少しネタバレ含む)
以下、感想となりますが若干のネタバレを含みますので新鮮な気持ちで本編を読みたい方はお気をつけ下さい!
仙台の団地、ヒルズタウンに住む人々の様子を短編集としてまとめている本作。
8つのエピソードはそれぞれが独立しているので、共通する登場人物は出てくるもののどの話から読んでも大丈夫。
また全てのエピソードには「〇〇の〇ール」という形の名前が付けられており、目次を見た私は思わず「ハラ○チのネタみたいだ…」と呟いたのはここだけの秘密だ。(小声)
話が逸れてしまったが、とにかく1つ1つのエピソードがとても深く面白く、「そりゃ急に世界の終末になったらこうなるよな…」と思わされる場面がいくつも出てくる。
個人的なオススメは3つ目のエピソード「籠城のビール」。
ある兄弟が、事件に巻き込まれた愛する妹を間接的に殺したアナウンサーに復讐するお話。
恐らく世界の終末が告げられなかったら、この兄弟も復讐など考えなかっただろう。
だけど残りの3年、自分の愛する人を奪った奴が、家族と幸せに暮らすことを考えたら確かに自分も許せないかもしれない。
なんであいつだけ幸せそうなんだ、どうせ死ぬなら今やっちまおう。
現実世界でも、その状況になれば同じ考えを持つ人も当然いるでしょう。
もしかすると自分がその考えを持つ側にいるかもしれません。
一見嘘のような、あり得ないと感じるお話ですが、コロナウイルスが世界中で猛威を奮っている現状も数年前までは誰も想像すらしていなかったわけで。
ということはつまりこれもあながちあり得ない話でもないんですよね。
もしも明日、3年後に小惑星が地球に衝突します!なんてニュースが流れたら。
あなたはどうですか?
死に直面するわけなので多少の恐怖感はあると思いますが。
「これまで全力で生きてきたし、なんの悔いもないので残りの3年間をめいっぱい楽しもう!」
そう考えられる人って全人類の何割なんでしょう。
恐らく多くの人が「まだやりたいことたくさんあったのに全然できてないよ…」とこれまでの生活を少し後悔し、残りの時間をいかに悔いなく過ごすか考え直すはずです。
コロナウイルスもまさにそう。
これだけの騒ぎになるならもっと色々なところを旅行しとけば良かった…
遠くに住んでいる友達ともっと遊んどけば良かった…
人って縛りがないときは「いつでもできるしいいや!」みたいに考えるくせに、縛られた途端に後悔する生き物だとつくづく思いませんか?
じゃあ今、もう一度考えてみましょう。
私たちの住むこの世界では、まだ小惑星衝突のニュースもないし、もちろん予定もありません。
じゃあ明日からどう過ごしますか?
ちょっとこれからの生き方を考えてみるか…という気持ちになりませんか?
少なくとも私自身は何か行動しないとな…という焦りを感じました。
なのでこうして記事を書いてみることにしたわけです(笑)
改めてこういった考え方ができたのも本書に出会ったお陰ですし、つくづく読書は大事なんだなと思わされました。
これからの人生観を考えるきっかけとしても活用できる、とても深い一冊ではないでしょうか。
終わりに
今回は伊坂幸太郎著「終末のフール」をご紹介しました。
とてもとても深い内容の作品…
あり得ないと思いつつ、リアルな描写はさすが伊坂幸太郎だなと、そう感じる一冊になっています。
※偉そうですいません伊坂さん…
私たちも一日一日を大切に、できるだけ全力で生きていかなければなりませんね。
死ぬ時に後悔するのは誰でも嫌ですから…
ブログ更新もサボらず頑張ろうと思います(笑)
それでは、本記事が少しでも皆様のお役に立てれば幸いでございます!