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小説「羊と鋼の森」のあらすじ・感想まとめ。タイトルの意味は?

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ここでは羊と鋼の森のあらすじと感想、タイトルの意味についてまとめています。感想では多少ネタバレも含んでいますのでまだ読まれていな方はご注意ください。


宮下奈都著「羊と鋼の森」

2015年9月文藝春秋より刊行、2018年2月文庫化。キノベス!2016第1位、第154回直木賞候補作、2016年第13回本屋大賞受賞に加えて、2018年には俳優の山崎賢人さんを主演に据えて映画化もされました。

羊と鋼の森、一見タイトルからは内容を伺うことはできないようですが、どのような意味が込められているんでしょうね。

さっそく読了いたしましたのであらすじと感想、そしてタイトルに込められた意味についてまとめていきます。

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羊と鋼の森のあらすじ

はじめにネタバレを含まず羊と鋼の森のあらすじをまとめていきます。

運命を変える調律師との出会い

試験期間中、一人暮らしの下宿に帰る気が起きずたまたま教室に残っていた「外村(とむら)」は、担任から来客を体育館へ案内するよう頼まれる。職員玄関へ向かうとひとりの男性が立っていた。彼は「江藤楽器の板鳥」と名乗る。楽器屋さんを体育館に案内する意味が分からない外村が戸惑っていると、板鳥はピアノに用があると話した。

体育館へ案内し、頼まれごとを終えた外村が帰ろうとすると後ろからピアノの音がした。今は試験期間のため、体育館にはそれ以外の音がない。外村はしばらくその場で音を聞き、心地の良い音を奏でるピアノのところへ戻った。板鳥は外村に構わず鍵盤を叩いている。

調律を終える頃には、外村はすっかりその音や空間に魅了されていた。「弟子にしていただけませんか。」外村は勢いのまま板鳥に言葉をぶつけるが、自分は弟子を取るような分際では無いと断られてしまう。ただその代わりに本気であるならと、専門学校を紹介してもらう。外村は調律師を目指すため、その学校へ進学を決意するのだった。

ふたごの姉妹が奏でるピアノの音色

専門学校を卒業した外村は、板鳥のいる江藤楽器へ調律師の卵として就職。入社して5ヶ月が過ぎた頃、先輩の柳が抱える顧客の家へ調律の同行をすることになった。あくまで補助目的の同行であるが、外村にとっては初の調律である。

目的地にあったピアノは綺麗に磨かれていて、とても大事にされていることが伺えた。そのピアノの弾き手は高校生の和音(かずね)と由仁(ゆに)という双子の女の子。特に姉である和音のピアノの音は素晴らしく、耳に鳥肌が立つほどであり明らかに特別な音に感じた。

調律を終え、柳と今日の調律と双子について話をしていると、柳は断然妹の由仁のほうがおもしろいピアノを弾くと言う。今回が初の調律であるという特別感を差し置いても、外村は姉の和音の音が特別だと感じたこの感覚が果たして合っているかは分からないが、外村は引き続きこつこつと調律師としての仕事を続けようと考えるのだった。

外村の調律師としての成長を描く、まるで本からピアノの音色が聞こえてくるようなとても素敵な物語。

映画化情報

羊と鋼の森は2018年6月8日に映画が公開されました、主要キャストは下記の通りです。

  • 外村直樹:山崎賢人
  • 柳:鈴木亮平
  • 佐倉和音:上白石萌音
  • 佐倉由仁:上白石萌歌
  • 濱野:仲里依紗
  • 板鳥:三浦友和

かなり豪華な顔ぶれですね、和音と由仁が実際の双子である上白石姉妹で演じられているの、めっちゃ良くないですか…?

また板鳥を演じている三浦友和さん、めちゃくちゃ渋くてかっこいいし、この役にぴったりだと感じます。

ちなみにですが、主人公の外村の名前「直樹」は小説の中には出てきません。初めから決められていたのか、はたまた映画化をする上で決められた名前なのでしょうか。

本を読み慣れてない方はぜひ映画からチェックしてみてくださいね。

羊と鋼の森の感想

ここからは羊と鋼の森を読んだ感想をまとめていきます。

素晴らしい作品であることは言うまでもなく、主人公・外村の成長を感じることのできる心温まる物語でした。

ピアノの音色が聞こえてくるような文章

物語の1つのキーワードになっているピアノ。外村を主軸として江藤楽器で働く調律師や、調律をお願いするピアニストの人たちの生活や思いを綴っているその文章からは、まるでピアノの音色が聞こえてくるような鮮やかさがあります。本を読んでいるときはぜひクラシックを聴きながら読み進めることをおすすめしたいです。

外村が調律師を目指すきっかけとなった板鳥の調律場面では特に音が響いているように感じました。もちろん実際に本から音が出てくるなんてことはありませんが、きっと外村はこんな音を聴いて調律師を目指したんだろうなぁと想像しながら読むのもまた一興ではないでしょうか。

不器用な青年の成長物語

主人公の外村は決して器用な人間とは言えません。先輩の冗談を真っ直ぐに受けて一体どんな意味だったんだろうと熟考したり、双子のピアノを自分で調律した際にはみるみるうちに音がずれてしまったりと、失敗も重ねていきます。

どうすれば調律がうまくなるのか。彼はそのことだけを考えて、日々一人前の調律師への階段を一歩一歩登っていきます。時には進めない時もある、しかしそれにも必ず意味があるということを外村を通して気づかされます。

初めは高校生だった外村を見ていると、まるで親心のようなものが芽生えてきてしまいました。

ピアノや音楽に興味がある方だけではなく、新しい環境に身を置いた方にとてもおすすめです。読書感想文にもぴったりの作品ですね。ぜひこれからの活力をもらってみてください。

「羊と鋼の森」タイトルの意味は

本書のタイトルである「羊と鋼の森」は一見ピアノとは関係のないような言葉に見受けられますが、実はそうではありません。

「羊」はピアノの弦を叩くハンマーが羊毛で作られていること、「鋼」はハンマーで叩かれるピアノの弦、「森」に関してはピアノの材料である木材という意味の他、外村が生まれ育った山の集落にある森を指していると思われます。

外村は作中様々な場面でこの「森」の匂いを感じとります。

その人が鍵盤をいくつか叩くと、蓋の開いた森から、また木々の揺れる匂いがした。

「羊と鋼の森」宮下奈都著 文藝春秋(2015/9/11) より引用

ピアノを「蓋の開いた森」と表すのがまた美しい。私の憶測ですが、ピアノから感じる木の匂いだけでなく、静寂な森の中で聞こえる風や木々の音と、ピアノの美しい音を掛け合わせて「森」と表現しているのだと感じます。

まとめ

今回は羊と鋼の森のあらすじと感想、タイトルに込められた意味についてまとめてみました。

ピアノを習っていないと中々出会うこともない調律師というお仕事。ひとつひとつの音を丁寧に紡いでいく素敵なお仕事ですが、その分かなり大変なことも伺えました。

私自身は本作で初めて調律師という職業を知るきっかけにもなったので、大変勉強になりました。こうした知識が身につくところも読書の醍醐味ですよね。

気になった方はぜひ読んでみてくださいね、本記事が少しでも多くの皆様の参考となりましたら幸いです。

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