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博士の愛した数式のネタバレ感想!あらすじや映画情報もまとめてみる

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この記事では博士の愛した数式を読んだネタバレ含む感想と共にあらすじや映画情報をまとめています。まだご覧になっていな方はご注意ください。


小川洋子著「博士の愛した数式」

悲しく辛い現実があっても、それすら覚えていることができない。

悲しい現実は確かにそこにはあるけれど、悲しいだけではなく愛も感じることのできる大変素敵なお話でした。

本作は映画にもなっていますので多くの方が耳にしたことがあるのではないでしょうか。

少しでも気になっている方はぜひご覧になってみてくださいね。

それではネタバレ含む感想をまとめていきます。

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「博士の愛した数式」ネタバレ感想の前に

博士の愛した数式のネタバレ感想をまとめる前に本作の概要をまとめていきます。

2003年8月30日新潮社より刊行、その後2005年12月1日に文庫化。

第55回読売文学賞の受賞を皮切りに2004年の第1回本屋大賞も受賞しました。

いまや発表と同時に話題作の仲間入りとなる本屋大賞ですが、初代受賞作品は博士の愛した数式だったんですね。

この作品から本屋大賞の歴史が始まったとは、読書ファンからするとなんだか感慨深いものがあります…。

本屋大賞の受賞作品は別の記事でたくさんまとめていますのでぜひそちらもチェックしてみてね!

本作は不慮の事故により記憶が八十分しか続かなくなってしまった数学の元大学教師と、そこへ訪れる家政婦とその息子が織りなす少し切ないけど心温まる物語です。

小説だけに留まらず映画化や舞台化もされており、多くの方々を魅了した人気作。

いくらその日に仲良くなったとしても、八十分しか記憶が続かないということは次の日には完全に他人になってしまいます。

それだけ聞くと悲しいお話なのでは?とも思いますが、一言では言い表せない、愛の温もりを感じる素敵なお話でした。

あらすじ

あけぼの家政婦紹介組合からある老人のところへ派遣された「私」。

お客様からのクレームによって家政婦が交代させられると顧客カードの裏に星印の判が押されるのだが、その老人には9つもついており明らかに普通ではない相手であることは容易に想像がついた。

面接のために家を訪れると、義姉と名乗る老婦人が対応した。

本人に会うことは可能かと問うと、明日には忘れてしまうのでその必要はないという。

義弟の記憶は八十分しかもちません。きっちり、一時間と二十分です。

「博士の愛した数式」小川洋子著 新潮社(2003/8/30) より引用

改めて顧客カードの星印が思い出されるが、八十分しか記憶が持たないというイメージもあまり湧かないため私は考える間もなく家政婦を務めることになった。

そして家政婦として訪れた初日。

初対面するその老人は私の靴のサイズや電話番号など、あらゆる情報から数学に関する事柄へと結びつけて結論づけた。

たとえば私の電話番号「5761455」は1億までの間に存在している素数の個数であるという。

数学専門の元大学教師である彼を私は博士と呼ぶことにした。

博士は数学以外のことに一切の興味を抱かず、料理や掃除、洗濯などの家事には無頓着だった。

ある日、「私」に息子がいることを知った博士はこんなところで働いている場合ではないと熱を持って話した。

数学以外に興味はないと思っていたが博士は執拗なほど子供に優しさを見せ、次からは息子も博士の元へ連れてくることになった。

言われた通りに訪れた息子は博士に「ルート」と名付けられ喜んで歓迎された。

ここから「私」とルート、博士による3人の日々が始まりを告げる。

喜怒哀楽の感情を次の日には忘れてしまう博士、私とルートは時に悩みながらも喜びに満ちた日々を過ごしていく。

映画情報

博士の愛した数式の映画は2006年1月21日に公開されました。

監督は、これまで「阿弥陀堂だより」や「明日への遺言」などを手掛けた小泉堯史さん。

多少異なる展開があるもののほぼ原作を再現した形で映画化されています。

原作では物語の語り手となる「私」の名前に触れられていませんが、映画では「杏子」として登場。

メインキャストは以下の通りです。

  • 博士 ー 寺尾聰
  • 私(杏子) ー 深津絵里
  • ルート ー 斎藤隆生
  • 19年後のルート(先生) ー 吉岡秀隆
  • 老婦人(未亡人) ー 浅岡ルリ子
  • 薪能の客 ー 小川洋子(カメオ出演)

錚々たる顔ぶれの中に原作者の小川洋子さんの名前もありますね!

また、博士役の寺尾聰さんは本作にて日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞しています。

映画自体は興行収入12億円と大ヒットと言える数字ではありませんでしたが、今もなお評価の高い名作映画のひとつになっています。

「博士の愛した数式」ネタバレ感想

博士と私、ルートの3人が繰り広げる悲しくも温かい日常を描く本作。

何より博士の特徴のひとつである八十分しか記憶がもたない点は、通常では味わうことのない悲しみと絶望を3人に与えていてすこし辛い気持ちにもなります。

博士が着用する背広にはあちこちにメモが貼り付けられており、忘れてしまった場合はそれが唯一記憶の手がかりです。

僕の記憶は80分しか持たない

「博士の愛した数式」小川洋子著 新潮社(2003/8/30) より引用

博士は背広についたこのメモを毎朝起きてから確認し、絶望を味わいます。

1日の始まりは過去の自分からの信じられないようなメッセージ、いくらなんでもこれは辛すぎます…。

当の博士は不慮の交通事故に巻き込まれ、その日を境に記憶が八十分しかもたなくなってしまいますが事故が起きた以前の記憶は残っています。

そのためこれまで学んだ数学に関する膨大な情報は覚えていますし、阪神にはまだ江夏がいると思っています。

大の阪神ファンであった博士を悲しませないよう、すでに引退した江夏はたまたま今日の試合に出ていないことを装う私とルートの優しさにはとても感動を覚えます。

しかし、その優しさすら八十分経つと思い出すことのできない博士が側にいることを考えると、温かい気持ちになるのにどこかずっと寂しい気持ちも居座り続けていました。

もちろん博士に悪気は微塵もありませんが、もし現実に自分の側にいる人が八十分しか記憶がもたなくなってしまったら…そしてそれが愛する家族や恋人だったら。

考えれば考えるほど、いかに記憶が蓄積されるという当たり前のことが幸せかということを思い知らされますよね。

学生時代にもっとああしておけば良かった、仕事の上司から嫌味ばかり言われる、親しい友人と喧嘩をした等々、忘れたいほど辛い記憶がある方もいるかもしれませんが、それを思い出せることが実は幸せなんだと言うことを噛み締めましょう。

人は過去の記憶から改善を繰り返し、毎日新しい自分へと更新するチャンスがあります。

改めて当たり前のことを幸せと感じる大切さを思い出させてくれる物語であったと感じました。

博士の以外な一面

決して愛想がいいとは言えず数学以外にはてんで無関心な博士、しかし子供に対してはとても優しい一面がありました。

数学のことを考えているときは基本的に外の世界を完全に遮断している彼ですが、ルートが話かけるとわざわざ数学を中断して会話に時間を割きます。

まるで人が変わったように優しく接する博士を見ていた「私」も、実は悪い人ではないのだと徐々に心を開き親しみが強くなっていきました。

子供を未来の宝物のように扱う博士の考え方はとても素敵ですよね、一見ぶっきらぼうな人のようにも思えましたが根はとても優しいんでしょう。

博士の悲しい現実だけではなく、彼の子供との接し方や考え方について知るとより物語を楽しむことができました。

徐々に短くなる時間

最後には八十分の制約が徐々に短くなり、博士の記憶がもつ時間がなくなっていき医療施設へと預けられます。

施設には「私」とルートに加えて、これまで接触を拒否していた義姉の老婦人も定期的に訪問するようになり、博士にはもう刻み込まれることのない想い出を新しく作っていくのでした。

博士が死ぬまでこの訪問は続きましたが、天国へと旅立った博士にはきっと良き想い出として胸に刻まれているはずです。

また、ルートは大人になり中学校の数学教師になることに。

ルートがどういった心境で数学教師を目指したのかは描かれていませんが、博士から学んだ数学の楽しさが彼の将来に影響を与えたことは間違い無いでしょう。

数学と子供を大切にしてきた博士のように、ルートにも素敵な大人になっていって欲しいですね。

「博士の愛した数式」ネタバレ感想まとめ

今回は博士が愛した数式のネタバレ感想と共にあらすじや映画情報をまとめてみました。

八十分という短い記憶の中で必死に生きる博士、不器用な人間ながら子供への考え方を見るにとても良い人なんでしょうね。

ルートも博士の意思を継ぎ、数学に携わる人間として立派に生きていくことでしょう。

この他にも小説の書評をたくさんまとめております。

こちらも良ければ目を通してみてくださいね。

本記事が少しでも多くの方の参考となりましたら幸いです。

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