本記事では「同志少女よ、敵を撃て」のあらすじと感想をまとめています。結末に触れるネタバレは含んでいませんが、感想では内容に触れておりますのでまだ読まれていない方はご注意ください。
逢坂冬馬著「同志少女よ、敵を撃て」
2021年11月17日早川書房より刊行、翌年の2022年には本屋大賞を受賞、さらにはアガサ・クリスティー賞や「キノベス!2022」の第1位を受賞、第166回直木賞候補、年間ベストセラー・本ランキングでは「2022年いちばん売れた小説」に輝くなど、まさにその年を代表する作品となりました。
しかも本作は著者である逢坂冬馬さんのデビュー作、1作目からここまで話題になる小説家もあまりいないのでは?
これだけ話題になっていましたので、私のよく行く本屋さんでも特設コーナーが作られていました。
また本作は戦争をテーマにした作品であり、昨今ニュースでよく目にするロシアとウクライナの戦争も相まって多くの人が関心を持ったことでしょう。
ここまで注目された作品なので読書好きを自称する私が読まないわけがない。ということでさっそく読了致しました。
あらすじと感想を以下にまとめておりますので、参考までにどうぞ!
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同志少女よ、敵を撃てのあらすじ
はじめに「同志少女よ、敵を撃て」のあらすじをまとめていきます。こちらは物語の冒頭部分まで記載しておりますので結末まで触れるネタバレはございません。
平和な村に住む少女セラフィマ
1940年5月、ソ連のイワノフスカヤ村に住む16歳の少女・セラフィマは母・エカチェリーナと今日も鹿を狩りに行く。家を出るといつもの景色が目に映ってくる。薪を割るアントーノフさん、鋤をかついだゲンナジーさん、近所に住むエレーナ、そしてエレーナの兄のミーシカ。村人がたったの40人であるこの村では、それぞれが昔からの顔馴染みだ。
特にミーシカはセラフィマにとって村で唯一同い年の男の子。兄と妹のように育ったふたりはなんとなく結婚するんだろうと、村人だけではなく当の本人たちもその空気感を察していた。
裏山へと続く道を登る途中に見える、イワノフスカヤ村を一望できる場所。セラフィマはここからの光景が好きで、この幸せな日々がいつまでも続くと信じていた。
村を訪れたドイツ兵たち
2年後、18歳になったセラフィマは今日も母と狩りへ。以前にも増して戦争が身近になり、ドイツ軍進行の影響で先月までイワノフスカヤ村も疎開するかの瀬戸際に立たされていた。ただ今年に入ってソ連軍の冬季反攻が始まったため、村人はとりあえず安心していた。
狩りを終え村へ帰ると何やら様子がおかしい。村に自動車を持つ人はいないはずなのに、なぜか車のエンジン音が聞こえる。様子を確認するとそこにはドイツ兵の姿が。彼らは村人ほぼ全員の両手を挙げて並べさせ、ついにはアントーノフおじさんの頭を撃ち抜く。顔面蒼白となったセラフィマから母・エカチェリーナは狩猟用ライフルを受け取ると、村人たちの救出を試みる。しかしエカチェリーナはセラフィマの目の前で銃撃されてしまう。
戦いたいか、死にたいか
後にドイツ兵に見つかったセラフィマは一軒の家へと連れていかれる。傍には引きずられてきた母親の死体、最悪の状況が目の前に広がり自身も死を覚悟した。しかしその時、ソ連赤軍が急襲し彼女を窮地から救う。赤軍を指揮していたのは女性兵士のイリーナ。彼女は若き少女に問うた。
「戦いたいか、死にたいか」
何の覚悟も持たない少女に突きつけられる重い問い。目の前で母親と村人たちを殺されたセラフィマは狙撃兵になることを決意し、イリーナが狙撃の精鋭を育てる訓練学校へと向かうのだった。数多の死線を潜り抜けたその先に、セラフィマは何を思うのか…?
同志少女よ、敵を撃ての感想
ここからは同志少女よ、敵を撃てを読んだ上での感想をまとめていきます。あらすじと同じく、物語の結末に関わるネタバレは含んでおりません。
文字だけでも伝わる戦争の凄惨さ
物語は1942年のソ連とドイツの戦争を主題としているので、当然のように人が死にます。冒頭では自分が生まれ育った故郷の村にドイツ軍がやってきて、村人だけでなく自分の母親までもが目の前で殺されます。戦場なんてもちろん経験したことのない少女が目の前に母親の死体を置かれたら、何を思うのでしょう。
こんな残虐で非現実的なことが、実際に起こってしまうのが戦争の恐ろしさです。そしてその恐ろしさを本作は文字だけで十分伝えてくれます。人がどうやって死ぬのか、銃で撃たれたら体から血はどう吹き出すのか、殺した本人は何を感じるのか。表現がとてもリアルで、まるで自分が戦場にいるかのようです。
現在の日本はとても平和で、「戦争なんて起こるはずがない」と思っている人たちが大半を占めます。ですが、現代でもロシアとウクライナのように戦争は世界の各地で起こっているのです。戦争の凄惨さを感じるとともに、改めて絶対にやってはいけないことなのだと考えさせられる作品でした。
18歳の少女が兵士へ
主人公となる少女セラフィマは18歳でイリーナが指導を行う訓練学校にて人を殺す訓練を受けます。もちろん母親を撃った狙撃手を自分の手で殺し、仇を打つためです。戦争なんて起こらなければ彼女は人間の殺し方など学ぶこともなかったはずで、きっとイワノフスカヤ村で幸せに暮らしたことでしょう。
女性にスポットを浴びせた本作は、セラフィマやイリーナをはじめとした若い女性の兵士が多く登場。「18歳の女性狙撃手」というと漫画のような話かもしれませんが、これは現実に起こったことであり、またこれから起こりうる話でもあります。まだ恋すらまともにしたことのない若人たちに、戦争なんてさせてはなりません。
現代では2022年2月24日、ロシアがウクライナへ本格的な軍事侵攻を開始しました。その直後4月6日に本作は本屋大賞を受賞し多くの人の注目を浴びることになります、不思議な縁を感じますよね。これによって一人でも多くの方が本作を手に取り、戦争について考える機会が生まれることを願います。
読書量は多めだが気にならない
本作書籍はおよそ500ページのボリューム感で読書量としては結構多めです、見た目は少し薄めの辞典くらいあります。読書初心者だった私は本当に読了できるのか…と、購入する際に少しひよってしまいましたが、しかしそんな心配も束の間、一度読み始めると先が気になりすぎてあっという間に読了。
ただやはりネット上には量が多く読み切れなかったという意見がチラホラ。さらに「戦争」という、決して読んでいて心から楽しめる内容でもないのが拍車をかけたのでしょうか。1日に少量でもいいので、自分に無理のない範囲で徐々に読み進めていくのがおすすめです。
まとめ
今回は「同志少女よ、敵を撃て」のあらすじと感想をご紹介しました。
さすがは本屋大賞受賞作品…戦う兵士たちの心情、戦争の凄惨さが文字だけでも伝わるリアルな描写は圧巻です。改めて戦争という行為は絶対にしてはならないとも感じる作品でした。
少しでも過去に起きた戦争、そして現在のロシアとウクライナの戦争に関心がある方はぜひ読んでみてください。そして何かを感じ取っていただき、戦争のない世界を作るにはどうすれば良いのか、自分は関係ないなどと思わず一緒に考えていきましょう。
本記事が少しでも多くの方の参考となれば幸いです。
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