本記事は四畳半王国見聞録のあらすじと読んだ感想をまとめています。基本的にネタバレは含みませんが、何も知らずに読みたい方はご注意ください。
森見登美彦著「四畳半王国見聞録」
京都を舞台とした作品を数多く世に出していることで有名な森見登美彦さんの短編小説集、もちろんこちらのお話も京都が舞台です。
2011年1月28日新潮社より刊行、2013年6月26日新潮文庫にて文庫化。
本書タイトルにある「四畳半」という単語、森見作品を知っている方であれば聞き覚えがありますよね?そうです、本作は同じく森見氏の作品である四畳半神話大系や四畳半タイムマシンブルースにすこーしだけ関連した作品となります。
どちらもとてもユニークな登場人物が出てきて大変面白い作品でございましたが、さて本作はいかに?森見氏の作品読み初めはドキドキわくわくがいつも止まりません…
ということでさっそく読了しましたので、あらすじと感想をまとめてみました。ぜひ参考にどうぞ!!!
四畳半王国見聞録のあらすじ
四畳半王国見聞録はいくつかのお話がまとめった短編集ということで、以下7つのお話が集約されています。
- 四畳半王国建国史
- 蝸牛の角
- 真夏のブリーフ
- 大日本凡人會
- 四畳半統括委員会
- グッド・バイ
- 四畳半王国開国史
ここでは上記の中から四畳半王国建国史、蝸牛の角、真夏のブリーフについてのあらすじを簡単にまとめていきます。
四畳半王国建国史
法然院学生ハイツなる建物の内部に存在している四畳半王国。その名の通り四畳半という広大無辺の広さの中には本棚一杯の書物、招き猫や怪獣模型の国宝、さらにはパソコンおよび猥褻物の数々が存在し、その国土が形成されている。
いまこの四畳半王国に君臨するのは余のみ。しかも鉢巻以外は全裸状態という、王国に数ある猥褻物を具現化したような姿だ。しかし余はこの国の王、何をしてもこの四畳半王国では自由なのだ。
これは四畳半王国の主である「余」が、王国を訪れてから現在までどのような苦労を乗り越え王国建国を実現してきたか、数々の歴史を端的にまとめたお話である。度重なる災難も王たる余には通用しない。
これから更に王国を豊かにするため、余は今日も建国計画を一人企てていくのであった。
蝸牛の角
下鴨神社の東に位置し、築年数すらわからない骨董的アパート「下鴨幽水荘」。その二階にある四畳半の一室では、阿呆神について語るある四人の姿があった。この中の一人、薄汚れた浴衣を着て無精髭を生やす男こそがこの部屋のヌシである。
ヌシの向かい側には三人の学生が正座をしている。ひとりはぬらりひょん的な笑いを浮かべる不気味な男だ、どうやら阿保らしい。もうひとりはひょろっと痩せた体系で流行ってもいない文学青年風を装っている、どうやらこいつも阿保。彼らから距離を置いて饅頭を頬張っている黒髪の乙女。無論、この妖怪どもに混じっているのだからただの乙女ではない。
無精髭の男によると、阿呆神は至る所にもぐりこんでいるらしい。饅頭の表面にあるぶつぶつ、蝸牛の角の上、ヤモリの足裏、そして文学青年風の親不知の奥底にも。
文学青年風には虫歯があったが、そこでは山盛りの饅頭を無理強いさせられていたのである。すると饅頭を頬張っていた乙女が文学青年風の親不知を目視すると言い始めた。ぎざぎざとした親不知らしくない形状のその歯は、鞍馬あたりに連なった山々に見え始めていき…。
真夏のブリーフ
時は真夏の午前十時。昨晩、四畳半の部屋で芽野たちと鮨詰め鍋パーティーを行った鈴木の元に三浦さんから電話がかかってくる。徹夜明けでようやく今から寝ようとしていたところなのにタイミングが悪い。三浦さんは夏の暑さにいらいらしているのか、チクショウとつぶやいた。
三浦さん曰く、緊急事態が発生したため鈴木に電話したとのことだった。しかし徹夜明けの鈴木は眠くてぼーっとしたまま電話越しに三浦さんの話を聞いている。なんでも黄色地に紫の水玉模様のブリーフ一丁の男性が日傘を持って立っているらしい。確かにその光景は緊急事態である。
ブリーフ一丁の男は芽野のアパートと三浦さんの間にある空き地に出現。そこには前まで「てんぐ食堂」という食堂があったが、以前に取り壊されていた。男はブリーフ以外何も身につけておらず、日傘を指して空を見ている。意外にも鍛え上げられた体をしており、腹筋の割れ目は三浦さんの部屋からでも見えるくらいとのことだ。
そんな立派な筋肉のある男には到底太刀打ちできない…と、鈴木は既に諦めモードに入っていたが、三浦さんも負けじと鈴木に助けを求める。渋々とりあえず見に行くことを了承した鈴木に三浦さんは「ついでにコンビニに寄ってきてくれる?」と投げかける。それが本来の目的なのでは…?とも言えず。
何かが起こってしまいそうな1日の始まり、この後の展開はぜひ本書にてご確認ください!
四畳半王国見聞録の感想
最後に四畳半王国見聞録を読んだネタバレ含む感想をまとめていきます。面白いことは間違いないんですが、森見登美彦さんの小説はどれも個性が溢れまくっていて読了後は少し頭がボーッとします…特に本作は凄かった、良い意味で。
現実にあり得なくもない、ギリギリを攻めた作品
ファンタジー色の強い森見氏の小説の中でも現実離れしている作品だと感じますが、ただよく考えるとあり得なくもないかあという気もする。真夏に家の前の空き地にブリーフ一丁の男が、たしかに立っていなくもないかあという、ファンタジーもリアルも感じられる作品に仕上がっていたのではないかと思います(笑)
物語に登場する多くの阿呆たちはめちゃくちゃ個性的、読んでるだけなら笑えますが、現実でこういった人たちが周りにいるのは少し傍迷惑な気もします…。阿呆たちによる奇想天外な展開の連続に、読み進めていた途中で「あ、これはあまり深く考えながら読んじゃいけないやつだ…。」と察しました。
考えれば考えるほど、愉快だけど意外と複雑はお話なので頭は疲れてくるでしょう。そんな時は一度頭を真っ白にして、ぜひ自分も阿呆になりながら四畳半のお部屋で読んでみることをおすすめします。理解するのではなく、感じる作品です…。
森見作品お馴染みのキャラクターも登場!
作品内には森見作品でもお馴染みのキャラクターが登場します。文学青年風を装っているのは「私」、饅頭を頬張る黒髪の乙女は明石さん、薄汚れた浴衣の男は樋口師匠、そしてぬらりひょん的な笑みを浮かべるのは小津です。ご存知の方も多いとは思いますが、これらは四畳半神話大系や四畳半タイムマシンブルースで登場するメインキャラクターたちです。そもそもこの方々の本拠地ともいえる「下鴨幽水荘」が出てきた時点でピンときた方も多かったでしょうね。
さらには芽野や芹名といった人物は「新釈 走れメロス 他四遍」に登場していました。
このことから、これまでの森見作品を事前に読んでおくことでより楽しめる内容になっています。ただお話自体の関連性はありませんので、始めに本作を読んでキャラクターが気になったらこれらの作品を読んでも遅くはないです!「四畳半」という言葉が付くのでてっきり四畳半シリーズに関わるお話なのかと思いきや、著者の森見氏自身も「四畳半がしきりに出てくる以外に、ほとんど関連はない」とお話しているようです。
改めて振り返ると森見作品ってほんとに楽しいキャラクターがたくさん登場しますよね、もちろん本作で出てくる登場人物たちも他に引けを取らないくらい個性で溢れかえっていますので、ぜひそこも楽しみながら読んでみてください。
まとめ
今回は森見登美彦著「四畳半王国見聞録」のあらすじと感想をご紹介いたしました。
京都、四畳半、大学生といったら森見作品という方程式が成立しているこの作品、相変わらずの森見節炸裂で楽しく最後まで読むことができました。
読書好きの大学生はぜひお手に取ってみてね。
この記事が少しでも多くの方の参考になれば幸いでございます。